مشاركة

蒼鋼のカナリア #3

مؤلف: 安井優
last update تاريخ النشر: 2025-11-26 19:50:10

 三日目、夕暮れの迫る砂丘。本来であればテントを建てるべき時間だが、シュヤとマリはまだ歩いていた。

 目的の地、蒼鋼の採掘場が見えていたからである。

「あれだ……」

 突然砂地の中に現れた大きな岩山は蜃気楼の奥、まるで水面に島が浮いているように見えた。逆光で黒くそびえるそれは今にもシュヤを飲み込まんとしている。くっきりと浮かび上がるゴツゴツとしたシルエットは、なだらかな砂地と果てのない空だけが続いている世界には到底似つかわしくない。そのせいで洞窟だけがこの世から切り離されているようにも思えた。

 洞窟の奥から風の吹き抜けてくるような音が聞こえ、シュヤたちは足を止める。

 互いに顔を見合わせれば、そのどちらの顔にも緊張と不安、喜びと興味が読み取れた。

「ついたね」

「うん、ついた……」

 洞窟内にも獣はいないと聞いている。そもそも、洞窟の中には人体に影響を及ぼすほどのガスが充満しているのだ。長時間中にいて生きて出られるものはいない。わかっているのに、それでも少しの恐怖が足をすくませる。

 ふたりの背後には夜が迫っていた。

 朝になってから洞窟の奥へ進むべきか、それとも、今中に入ってしまうか。

 シュヤが迷っているとマリが先に一歩を踏み出した。

「中に入ってみない? 危険を感じたら引き返せばいいし、そうじゃないなら採掘は一日でも早いほうがいいでしょ?」

 マリの言うことは正しい。国ではみんなが新たな蒼鋼を待ちわびている。国益はいつ底をついてもおかしくない。シュヤたちだって採掘が終われば自由になれる。まだ食料は潤沢にあるし、休むのは採掘が終わってからでもいい。

 それなのに、シュヤはどうしてかマリに続くことができなかった。未知への恐怖だろうか。言葉にできない嫌な予感が彼の心に引っかかっていた。

 洞窟の奥から鳴り響く風の音が自分たちを呼んでいるように聞こえるのだ。まるでおびき寄せられているみたいだと。

「シュヤ?」

 マリが振り返る。大口を開けた洞窟の暗闇を背負った彼女はいつもより小さく見えた。そのことがまたシュヤの心臓を無遠慮に撫でる。

 だが、やはり明日にしようとは言えなかった。マリの顔がすでに希望と誇りに満ちていたからだ。恐怖と不安を乗り越え、彼女は選んだのである。みなのために生きることを。

「……うん、行こうか」

 マリのそばにいると言ったのは自分だ。シュヤは洞窟ごときに怯えているわけにはいかないと自らを鼓舞した。他の国や土地ではもっと恐ろしいことがあるに違いないのだから。

 震える足を慎重に踏み出し、洞穴を見据える。目をこらしても洞窟の奥は見えない。

「風があるってことは空気も流れてるってことだわ。なんだか思ってたよりも大丈夫そう」

 マリは念のためにとカバンから毛布を取り出すと、いくらか毛をむしり取ってオイルに浸し、ためらいなく火をつけた。燃えあがった毛布を洞窟の奥へ放り投げる。暗闇の中で火は燃え続けていた。かすかな明かりは次第に奈落へと落下していく。

「地下に広がってるみたい」

 灯の軌道を読んだマリはそれだけですっかり冒険者気分になったようだ。どこか興奮した様子で「足元に気をつけながら進みましょう」といよいよ洞窟に足を踏み入れた。

 シュヤも置いて行かれないように、たいまつに火を灯してマリの後に続く。

――もう戻れない。

 後ろ髪が引かれるような粘度と湿度を纏った思いに蓋をして洞窟内を進む。

 ガスが充満していると聞いていたが特に匂いはなかった。むしろ、洞窟内には新鮮さを感じさせるほどのひやりとした冷気が漂っている。砂漠の夜は冷えるが、それよりも一段寒い。凍えるほどではないが体表から熱を奪うには充分な気温。シュヤとマリは体が冷えすぎないようなるべくピタリと体を寄せ合って歩いた。足場は想像しているよりもつるりとした岩でできており、地下へ続く階段は段差にばらつきがあるものの、過去に採掘場だった名残か、整備は行き届いている。注意していればなんの問題もない。足場が崩れるような心配もなさそうで、事前に教えられていたとおり獣も当然いなかった。

 どうやら心配や不安は杞憂だったようだ。

 すっかり安心しきったふたりの前に、さらに安心感を増長させるかのように狭い通路が終わりを迎えた。

明かりが少なくわかりづらいが、開けた空間が現れたのだ。かつて採掘場だったか、または採掘のために雇われた人々が休憩に使っていたか。どちらにせよかなりの広さがある。

「マリ、疲れてない? 体調は大丈夫?」

「うん、平気よ。シュヤは?」

「俺も大丈夫。でも、無理はよくないし、少し休憩にしようか」

 昨日までならもう休んでいる時間のはずだ。腹も空いている。シュヤの提案にマリも賛同し、彼らは夕食をここでとることに決めた。

 シュヤが準備をしている間、マリは空間の広さを調べるためと言ってロウソクを岩壁に沿って並べ始めた。何日滞在することになるかわからないので、あまりたくさん消費することは避けたかったが、ついに目的地にたどり着いたということもあってマリがいつもより楽しそうにしているのを見ると、シュヤもそれを咎める気にはならない。シュヤ自身、洞窟がどのような構造になっているのか知りたいという好奇心もあった。

 マリが灯りを並べ終えたのと、シュヤが夕食の準備を終えたのはほぼ同時だった。

「わぁっ!」

 マリの歓喜の声につられてシュヤも手元から視線を上げる。

 そこには町の広場ほどの空間が広がっていた。

「すごい……、こんなに広かったなんて全然気づかなかった」

「ほんと! これなら踊ることもできるし、手を広げて寝転がっても平気ね!」

 言いながら、マリはすでにダンスのステップを踏んでいる。みんなで手を繋ぎ、輪になって踊っていた祭りの日のことを思い出したようだ。普段のマリからはにわかに信じがたいはしゃぎようだが、きっとこちらがマリの本当の姿なのだろう。

 自身の踊りの稚拙さを恥じて祭りの日にダンスへ参加しなかったシュヤも今日は違った。夕食が冷めることも気にせず、マリの手を取って広間をぐるぐると回る。音楽はマリが口ずさみ、シュヤが足でリズムをとる。ふたりは意味のないその時間を目いっぱい楽しんだ。

 目が回ってようやく踊りを中断したシュヤとマリが夕食を始めるころにはすっかりスープも冷えていた。それでも、その夜に食べたスープは人生で一番おいしいとシュヤは思った。

 体調に変化もなく、広間から先に続いているのは一本道だけだということで、シュヤとマリは広間で休息をとることに決めた。興奮していると言っても体は疲れていたし、腹も気分も満たされ、忘れていた眠気がシュヤたちを襲ったからということもある。

 毛布を敷いてふたりで大の字になって眠る。

 いよいよ明日こそ国民の英雄になれる。気分は最高だった。

 翌朝、目が覚めるまでは。

استمر في قراءة هذا الكتاب مجانا
امسح الكود لتنزيل التطبيق

أحدث فصل

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #4-4

     マリックがあらゆる公務に追われ、ミアが王太子妃としての教育に明け暮れている間に結婚式当日はやってきた。 昨晩から王宮の外で国民たちがお祭り騒ぎし楽しんでいる様子が窓から見えており、マリックはいよいよこの日が来たと朝からソワソワ落ち着かない。化粧やヘアセットに時間がかかるミアと違い、準備を早々に終えたマリックはミアの部屋の前をウロウロと何往復もしていた。背中に隠した手にはミアにサプライズするブルースターの花束。今朝がたマリックが早起きをして摘み、不器用ながらも精一杯にラッピングした。「ふぅ」 緊張をごまかすように息を吐くと、準備が終わったのかガチャンと内側から扉が開かれた。ビクリとマリックは姿勢を正す。 顔を出したのはミアの側付きの侍女だ。侍女はマリックの姿を見つけると幸せそうな笑みをますます深めて「あらあら、まあまあ」と口元に手を当てた。だらしなく緩む頬を隠すためであろうが全身に漏れている。「ミアさま、マリックさまがお待ちです」 急かすというよりもマリックを招き入れてもいいかと確認するような口調だ。呼びかけに部屋の奥から「はい」とミアの承諾を含む返事が聞こえる。「入るぞ」 念のため声をかけ、マリックは侍女が開けてくれていた扉からそっと中を覗いた。こんな時くらい堂々としていればよいのに、待たされた時間に比例して緊張が増し体がうまく動かない。震える手で扉を押し開けて体を隙間にねじ込み、マリックは息を呑む。――綺麗だ。 パールホワイトをベースとして金をあしらったウェディングドレスに身を包み、ところどころにマリックが贈った青色のアクセサリーが煌めく。もとより陶磁器のように美しい肌によくマッチした色合いの衣装と装飾品はまさにミアのためだけに作られたもの。彼女の薄桃色の髪は綺麗に結われてシルエット全体に華やかさを与え、アメジストの双眸が一

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #4-3

     青色のものと言われて人は何を思い浮かべるだろうか。 空や海といった手に入らぬものから宝石やドレスに靴、ティーカップや皿、絨毯に毛布、文房具まで。 ミアと約束をしてから一週間後、マリックのもとにはサラハ国内に五万とある青いものが集められた。もちろん手に入らぬものは置かれていないが、それにしてもどこを見ても青、青、青……。見ているうちにだんだんと夢か現実かもわからなくなるような圧巻の光景だ。 青色のものを集めてくれとしか頼まなかったマリックのせいでもあるが。「これは……、想像していた以上に大変だな」 マリックは腰に手を当てて届けられた品物をざっと眺める。 花嫁に身に着けさせるものとして、さすがに装飾品にはなり得ないだろうと思われるものは除外していく。大きな絨毯、象の置物、ガラス製の重石や食器、絵画。グラスはミアが持つものに選んでもよいかもしれないなと一時は保留して、しかし、後になってそれは間違いだったとやはり除外した。 当然と言えば当然であるが、残ったのはドレスやスカート、リボン、宝石、アクセサリー。その他にはスカーフやハンカチ、ヘッドドレスなど身に着けるものだった。それでも数千種類はある。一体どこからこんなに集めてきたのだろうかとマリックはそれらを手に取り眺めた。 そこからの選別作業は更に気が遠くなるようなものだった。似たようなデザインの中から、デザイナーとともにすでに用意されている服装やアクセサリーと合わせて違和感のないものを選んでいく必要があったし、品位を損なわないものであることも重要だった。偽物の宝石などは論外だ。宝石は鑑定士を呼びつけ真贋を見極めた。衣服や布類の生地や色味についてはデザイナーだけでなく実際に衣装を製作している職人にも良し悪しを判断してもらった。 ほとんど寝ずの作業が続き、三日が経ってようやく百

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #4-2

     結婚準備のひとつに衣装選びがある。 マリックとミアの結婚式では場面に合わせて朝と昼、夜の三回色直しが行われることとなった。 両親や親族、国政に関わる貴族たちへの挨拶にはフォーマルなものを。国民への声明発表時には華やかで伝統的なものを。外交関係にある諸外国の要人を招く晩餐会にはクラシックながらダンスや食事に備えてカジュアルなものを。ただし、どれもデザインは統一感のあるものにと決まった。採寸や試着は別々に行うため、実際の衣装のお披露目は当日まで互いに秘密だ。 が、王宮のデザイナーとの打ち合わせの最中、ひとつだけミアがあることを告げた。「これまでマリック王子が私のために集めてきてくださったものを装飾品として身につけたいのです」 彼女の要望にマリックもデザイナーも顔を見合わせる。先に返答したのはデザイナーだった。「それは名案です。おふたりの愛の象徴ですし、結婚までの美しいストーリーがお客様がたにお衣装を通して伝われば結婚式も盛り上がります」 なるほど。そんなことまでミアは考えているのかとマリックが感心すると、ミアは曖昧に微笑んだ。それは、やや的外れだがそういうことにしておこうと考えている時のミアの反応だ。初めて見る人には分からないため相手の気を悪くさせることはない。何度かそうしたミアの反応を見てきたマリックにだけ分かる表情と言える。 結局、衣装に関する打ち合わせはデザイナーの機嫌もよいままにつつがなく終わった。 デザイナーが去ってふたりきりになった部屋でマリックはミアに問う。「本当の理由はなんだったんだ?」 問われたミアはマリックの質問の意味を考えていたが、すぐ自身の告げたわがままに思い当たったらしい。ミアは照れくさそうにはにかんだ。嘘やいたずらがばれた子供みたいな笑い方がいじらしい。

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #4-1

     砂漠から戻ったマリックとミアはみなからあたたかく迎えられた。マリックが不在の間に仕事はいくつも溜まっていたが、旅の疲れもあるだろうとマリックにはしばらくの休暇が与えられた。 マリックは休暇を使って早速ミアを両親に紹介し正式に婚約を伝えた後、ミアを連れてサラハ国中を回った。ミアのことを今までいかに考えていなかったか、砂漠でマリックが感じた自身の情けなさを払拭するための自己満足に近い行為であったが、ミアは大層喜んだ。 旅商人であるミアはやはり自由に外を旅するほうが性に合っているらしい。目にするものすべてに興味と好奇心を抱く彼女は幸せに満ちていた。マリックもミアとの旅には満足感を覚えた。 婚約の契約を交わしてから三か月以上。ようやくふたりは本当のカップルのように日々を過ごすことができたのだった。 休暇最終日の夜。城へと戻ったマリックは不満を露わにする。「休暇とはなぜこうも短いんだ」 旅の心地よい疲れと控えた仕事への嫌悪感を全身で表現するかのようにマリックはだらしなくソファに寝そべった。ミアは旅行先で手に入れた品物をひとつひとつ手に取りながら諭すような口調で相槌をうつ。「楽しい時間というのはあっという間に感じるものですし、それだけよい休暇だったということなのでしょう」「それはそうだが……。仕事がなければもっと楽しめる」「私は働くことも楽しいと思いますけど」 ミアは窓の外、どこか遠くへと視線を投げた。商人の仕事を気に入っていた彼女から仕事を取り上げてしまったのはマリックだ。ミアは嫌味や皮肉を言ったつもりは一切ないだろう。だが、マリックにはミアの言葉が引っかかる。「……旅商人に戻りたいと思うか?」

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #3-8

     名前を呼ばれた少女が顔をあげる。前髪の隙間から夜の訪れを告げるアメジストがばっちりとマリックを捕えた。「ミア! 本当にミアなのか?」――どうしてこんなところに。信じられない。夢でも見ているのだろうか。 マリックが駆け寄ると少女はホッと安堵したように肩を下げた。そのやわらかな笑みはたしかにミアのものだ。 マリックはただ衝動のままにミアを抱き寄せた。ぎゅっと彼女の背に手を回せば、ミアもまた控えめにマリックの背に手を回す。マリックを労わるような優しい手つきで彼女は二度、三度とマリックの背を撫でた。「会いたかった」 マリックの心からの想いに応えるようにミアが腕の中でかすかにたじろいだ。背中に回っていた彼女の腕が離れ、決して強くはない力でマリックの胸元を押す。マリックはそれを合図に体を離した。名残惜しいがミアの嫌がることはしたくない。それに。離れたほうがミアの顔がよく見える。「どうしてここに」 マリックはようやくそこで疑問を口にした。ミアはまだ抱擁されたことへの恥じらいがあるのか俯いたまま小さな声で答える。「マリック王子がおひとりで残られていると従者の方がお話されているのをお聞きして」 いても立ってもいられなくなったとミアは付け足して苦笑する。「私のせいで、ごめんなさい」「いや。ミアのせいなど……! ただ俺がそうしたかっただけだ」 ミアの謝罪をかき消すように精一杯強がる。だが、マリックの態度を見てもミアは申し訳なさそうな顔を崩さない。本当に自分のことを責めているらしかった。 マリックはできるだけ丁寧な手つきで彼女の頭を撫で、絹のようにサ

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #3-7

     少女はニシシと子供っぽく笑うと、マリックを砂から立ち上がらせて「それにしても」とマリックの姿を上から下まで見つめる。「お兄さん、どうしてこんなところに? 王子さまじゃなかったの?」「俺は正真正銘サラハの第一王子、マリック・ル・サーラだ。お前こそ、俺に金を返すと言ったくせに一度も返しに来なかったではないか!」「それは誤解だってば! わたし、ちゃんとあの後王城へ行ったのよ。でも、王子さまはいないって言われて……で? なんであなたはひとりでこんなところにいるの?」「それは……っ……」 純粋な少女の問いに、マリックはどう応えようかと迷い口をつぐむ。 愛する女性のために青い砂を探しているなど、馬鹿げた話をどうして素直に言えようか。 逡巡していると少女のほうが先に口を開いた。「あ、もしかして。砂漠の夢を探してるのってあなたのこと?」「砂漠の夢?」「うん。不老不死を司る砂時計、そこに使われていた青色ジルコニアのことよ」 少女はもう一度自らの首に提げていた砂時計を持ち上げる。彼女の手の動きに合わせてガラス瓶の中の青い砂がキラキラと揺れた。「その話、知っているのか?」 砂漠の夢と呼ばれていることは知らなかったが、おそらくマリックが探しているものに違いない。興奮したマリックは思わず少女にすがるように飛びついていた。サラハに住む多くの女性ならばマリックの甘い顔が急に近づくだけで心臓を止めてしまうだろう。しかし、少女は彼の行動にも驚いた様子はなく、無垢な笑みを浮かべた。「そりゃ、もちろん。妖精た

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #2-2

    「なぜ、お前の話はっ……、そんなに、悲しいものばかり……、っ、う……」 マリックの情けない嗚咽によってミアの語りが中断された。マリックはまたしてもミアに見られまいと顔を背けたが、ミアがどんな顔で自身を見ているかは想像に容易かった。 想像している通りの鈴のようなコロコロとした心地よい笑い声が背後から聞こえる。「まだお話は終わっていませんが……」

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #1-5

     蒼鋼が採れなくなったにも関わらず残された国民が生きながらえているのは、わずかに残った蒼鋼を大切に切り売りしていたからだとシュヤは町を歩きながら教えてくれた。 マリックが町中に転がる死体から目を逸らすと、その視線の先には死にかけている子供や老人が目に留まる。先ほどからその繰り返しだ。この国についてからずっと。サラハとここではあまりにも生活が違う。嫌でも分からされる。今この国から蒼鋼を奪えば、今度こそここの人間はみな飢え死にするだろう。さすがのマリックとて、自分のせいで死人が出ては目覚めが悪い。 サラハ

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #1-4

     蒼鋼を求めたマリックが国へ到着したのは、ミアと別れてから七日が過ぎたころだった。 道中は砂と空、時折現れるオアシスしかない。目的地までの旅路はマリックにとって今までにないほどの退屈と孤独を与えた。行程の半分にも満たないあたりで投げ出し、国へと帰りたくなってしまったほどである。 なんとか耐えられたのは、純真なマリックが持ちえる未知なるものへの興味関心とミアへの思いが少々、自分自身のプライドが少々。そして、彼に仕える従順で聡明な者たちのおかげであった。 出来る

  • サムシング・フォー ~花嫁に贈る四つの宝物~   サムシング・フォー #1-3

     マリックは、ミアの語りが止まったことで自らが泣いていることに気づいた。プライドの高いマリックにとって人前で泣くなど言語道断。じっとマリックを覗きこむミアの視線から顔を背け、必死に袖口で目元を拭う。気品あふれる王子の仕草からかけ離れた乱雑な動作であったが、ミアに涙を見せるよりはよかった。かっこ悪いと思われたくない。こんなことでとマリックはふてくされたくなる気持ちを抑え「ふん」と鼻を鳴らしてごまかした。 マリックの予想に反して、ミアは初めてマリックに自然な笑みを見せた。かすかだが、そこには愛情にも似た柔らかさがある。

فصول أخرى
استكشاف وقراءة روايات جيدة مجانية
الوصول المجاني إلى عدد كبير من الروايات الجيدة على تطبيق GoodNovel. تنزيل الكتب التي تحبها وقراءتها كلما وأينما أردت
اقرأ الكتب مجانا في التطبيق
امسح الكود للقراءة على التطبيق
DMCA.com Protection Status